2026年度に開催される第30回日本医療保育学会総会・学術集会にあたり,ご挨拶申し上げます。
日本医療保育学会は,小児医療に関わる保育の専門性を深め,その実践を通して「医療保育とは何か」を丁寧に問い続けてきました。30年という時間の中で,現場の声に耳を傾け,経験を分かち合いながら,一歩一歩歩んできたことが,今の医療保育の土台を形づくっています。そのような学会の総会・学術集会長をお引き受けするにあたり,身の引き締まる思いでおります。
さて,第30回の総会・学術集会は,2026年6月27日28日,徳島県鳴門市にある鳴門教育大学を会場に開催いたします。鳴門は,鳴門海峡の渦潮や四国八十八ヶ所霊場といった豊かな自然や文化を持つ土地です。さらに,第一次世界大戦中にドイツ兵捕虜によって日本で初めてベートーヴェン「第九」が演奏された歴史もあり,多様性や文化交流の象徴的な場所とも言えます。人と人がつながり,響き合うこの地域の歩みは,私たちが目指す医療保育の姿にもどこか通じるものがあります。
そして,今回のテーマを「『その子らしさ』が輝く医療保育-学会30年 歩みを力につながりを次の一歩へ」といたしました。医療に関わる子どもたちは,年齢や病状だけでなく,育った環境や家庭の状況,そして日々の思いも多様であり,一人ひとりが持つ「その子らしさ」はかけがえのない大切な存在です。私たちは,そうした子どもたちの小さな声に耳を傾け,思いに寄り添いながら,その子らしくいられる時間と空間を何よりも大切にしたいと日々心を込めて支援を続けています。病気や障がい,医療処置の有無にかかわらず,子どもが安心して自分らしく過ごせること,そしてその笑顔が輝くこと-それが私たちの願いであり,医療保育の本質であると感じています。
今回の総会・学術集会では,これまでの30年間に積み重ねてきた実践と研究の歩みを振り返り,その力を次の一歩へとつなげていきたいと考えています。他職種や地域社会,そして子どもに関わる者同士の「つながり」の中で,これからの医療保育の可能性をともに見つめ直し,語り合える場となれば幸いです。そうした営みを通じて,「その子らしさ」だけでなく「私たちらしさ」も輝いていけますように。新たな気づきや学びが,明日からの保育の現場へと優しく,そして力強くつながっていくことを心より願っております。
第30回 日本医療保育学会 総会・学術集会長
入江慶太
(新見公立大学健康科学部健康保育学科 准教授)